2.プライバシーはどこまで保護されるのか
 会社が電子メールをチェックすることに関して、従業員から、プライバシー権が主張されることがあります。
そもそもプライバシー権は憲法13条の人格権の一つとして保障され、「検閲」は憲法21条で禁止されます。
しかしながら、憲法で保障されるプライバシー権は、侵害の主体が国家である場合を予定することが原則ですし、
「検閲」も行政権が主体となるものに限られます。
 したがって、会社と労働者という私人間では、プライバシーの保護の程度は弱くなりますし、「検閲」に該当しません。
もちろん会社での電子メールについて、プライバシーがまったく保護されないわけではありません。
しかしながら、私用メールであるか業務メールであるかは、その内容によって判断されざるを得ず、
内容をチェックすることはやむを得ないといえます。
この点、タイトルやアドレスで判断するとの考え方もありますが、機密情報漏洩リスクや企業秩序
を考えると、内容をチェックすることの必要性を否定できません。
 一部の労働者には、電子メールのプライバシーが保護されるとの期待または誤解が存在することも事実です。
そのため、社内規程に電子メールをチェックすることがある旨を
記載するなどして周知することは、その期待または誤解を消すには適当な手段です。
 上記の裁判例でも、電話や私物管理用ロッカーと比較して、電子メールは性質上プライバシー保護の程度が
低いことを説明しています。社内電子メールについて、そもそもその程度の保護しか与えられないことが、
その本質上も、規程上も、システム上も合理的であることが広く誤解されるようになれば、チェックすることが違法だ
という主張自体がすくなくなってくることでしょう。

3.チェックの方法
 電子メールをチェックすることの可否、権限論については上記のように考えるとしても、
チェックをどのように行うかの方法論は別問題です。むしろ、チェックの必要性および
方法の相当性が、今後の実務上の問題となってくることでしょう。
 上記の裁判例はいずれも不法行為として争われた事案ですが、違法性に関して、チェックの必要性、
方法の相当性が問われています。この中で、方法の相当性について、X社事件では、「監視の目的、
手段及びその態様を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衝量の上、
社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となる」と判断されています。
具体的には、IT管理者以外がチェックしたような場合、あるいはIT管理者でも専ら個人的な好奇心等からチェックした場合は、不法行為上の違法と評価される余地があります。
 上司だからといって、当然にチェックできると考えることはあまりに安易です。
プライバシーを考えれば、第三者の専門性が求められます。
また、チェックの結果を関係のない者にまで漏洩することは、プライバシーの侵害となるでしょう。